頭痛の悩み.jp

これも生理痛?ズキンズキンと頭の片側が痛む

Aさんの場合片頭痛

動けないほどの頭痛が

「ねえママ、聞いてる?」
ソファに座り苦しそうにしているAさんの顔を、小学生の息子が覗き込みます。
「明日、学校で図工があるんだけど、空き箱を持ってきてって言われたんだ。何かない?」
「え、空き箱って、そんなの急に言われても」
生理中で体がつらいのをこらえ、家の中を探し回るAさん。ふと窓の外を見ると、今にも雨が降り出しそうな空模様です。しまった、洗濯物を早く取り込まなければ、と焦るAさんでしたが、そうしている間にも痛みは強くなっていき、我慢できずに再び座り込んでしまいます。
「ごめん、今ちょっと頭がズキンズキンして何もできそうにないの。空き箱、明日までに探しておくから……」
息子は不満そうな表情を浮かべ、わかったよ、と自分の部屋に戻っていきました。いつのまにか空は真っ暗で、大粒の雨が降り出しています。Aさんはため息をつき、同じような出来事があった先月のある日のことを思い返すのでした。

夫はわかってくれない

息子が眠りについた後、遅く帰ってきた夫とAさんはダイニングテーブルで向き合いながら、ちょっとした口論になっていました。
「仕事でクタクタに疲れて帰ってきて、家がこんなに散らかってたら、余計に疲れちゃうよ」
Aさんはこめかみを指で押さえながら、
「しょうがないでしょ。今生理中で、特に頭痛がひどくて動けないんだから」と言い返しますが、夫は納得しません。
「昨日はいつもより元気だったじゃないか。もりもり食べて、デザートだっておかわりして。ただのサボりじゃないの?
強く責められて感情がたかぶり、思わず涙を浮かべてしまうAさん。その様子に夫はぎくりとして、
「すまん、少し言いすぎた……でも、しばらくは仕事が忙しくて何も手伝えないんだ。家のことは頼むよ」
そう言って席を立ち、おやすみ、と寝室に去っていきました。

ひどい頭痛に、家族の無理解。
暗い気持ちになるAさんでしたが……

友人から「もしかして片頭痛?」

その日も朝から頭痛がひどく、趣味で続けているピラティス教室を休むことにしたAさん。ベッドで横になっているところに、同じ教室に通っている友人から電話がかかってきました。
「どうしたの、体調でも悪いの?」
Aさんが、今生理中で、特に頭痛がひどく、ズキンズキンと脈打つような痛みに悩まされていることを話すと、
「もしかして、片頭痛じゃないかしら」
そう言って友人は、自分が片頭痛持ちであることを打ち明けました。彼女の説明によると、雨が降る前は頭痛が起こりやすく、頭痛が起こる数日前から食欲が増す場合も多いとのこと。また、片頭痛は女性に多く、生理と関係があることも教えてくれました。
生理痛の一種だと勘違いする人が多いらしいわ。私は頭痛外来に通っているんだけど、あなたも一度受診してみたら?」
えっ頭痛くらいで受診? と大げさな気もするAさんでしたが、このつらさが少しでもラクになるならと、電話を切った後すぐに頭痛外来を検索してみるのでした。

自分の頭痛と向き合う

「ママ、何してるの? いっしょに遊ぼうよー」
ある日曜日の午後、テーブルで書き物をしていたAさんの背中に息子が乗り掛かります。それを制して夫は息子の体を持ち上げ、
「こらこらダメだよ、ママは大事な日記をつけているんだから」
「日記?」
Aさんは息子に微笑み返し、優しく答えます。
「そう、頭痛の日記。ママって時々すごく頭が痛くなることがあるでしょう? だから、どんなときに頭痛が起こったか、どれくらいの痛さだったかを書いておいて、自分の頭痛のことがよく分かるようにしてるの」
キョトンとする息子に、ごめんね、わからないわよね、と吹き出すAさん。頭痛外来を受診した結果、やはり「片頭痛」と診断されたAさんでしたが、しかしそれをきっかけに、自分の頭痛と前向きに付き合っていこうと決意したのでした。
「つまり……ママは頭痛の勉強をしてるってこと? じゃ、ぼくが学校の勉強をするのと同じだね。ママがんばって!」

解説

医者
静岡赤十字病院
脳神経内科部長・頭痛センター長
今井 昇先生
女性に多く、生理とも関係が深い片頭痛
女性ホルモンと片頭痛には深い関係があり、生理前や生理中に頭痛症状を訴える女性は少なくありません。生理時の片頭痛は、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に低下することにより引き起こされると考えられています。しかし、多くの女性は、生理時の頭痛を「生理痛の一種」と思っており、適切な治療を受けていないのが現状です。生理時に強い頭痛でお困りの方は、病院を受診して医師にご相談ください。
また、雨が降る前など天候が悪化することにより誘発されることも片頭痛の特徴のひとつとして知られています。ご自身の頭痛について客観的に理解するために、症状などを詳細に記録しておく「頭痛ダイアリー」は有効な手段です。受診の際や、継続して治療を続ける場合には、医師とのコミュニケーション手段としても役立ちます。