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片頭痛について

大規模な調査によると、日本の片頭痛患者さんは15歳以上で約840万人1)、15歳未満の方を加えると約1,000万人ともいわれています。片頭痛は珍しい病気ではなく、誰もがかかる可能性のある病気です。
片頭痛は女性に多く男性の約3.6倍です。中でも30歳から40歳代女性の有病率が高いことが知られています1)

性別・年齢層別 片頭痛の有病率

方法・対象:電話調査にて日本全国から無作為に抽出した15歳以上の日本人4,029人

Sakai, F. et al.:Cephalalgia. 1997;17(1):15-22.

障害生存年数(YLD)という日常生活への支障を表す指標を用いて世界の疾病負担を調べた研究によると、片頭痛は全疾患のうち2番目に支障が大きい疾患です2)。脳神経系の疾患の中では、20歳から60歳の女性で1番目に支障が大きい疾患で、支障のピークは35歳から49歳となっています3)
また、日本における片頭痛患者さんへの調査によると、頭痛による日常生活への影響は「いつも寝込む」4%、「時々寝込む」30%、「寝込むほどではないがかなりの支障がある」40%となっており、74%の方が、仕事や家事、勉強などの日常生活に支障をきたしています1)

日常生活に及ぼす影響

方法・対象: 日本全国から無作為に抽出した15歳以上の日本人4,029人のうち片頭痛の診断基準を満たした337人への電話・質問票による調査

Sakai, F. et al.:Cephalalgia. 1997;17(1):15-22.より作成

片頭痛が起こる仕組み

片頭痛は、何らかの刺激により、三叉神経と呼ばれる神経からCGRPなどの神経伝達物質が放出され、脳や脳の周囲の血管が拡張したり炎症が起こったりすることで、引き起こされると考えられています。

※CGRP(シージーアールピー):カルシトニン遺伝子関連ペプチド

頭痛を引き起こす要因

片頭痛患者さんの約75%には、頭痛が始まるきっかけ(要因)があるといわれています。その要因としては、ストレス、ストレスからの解放、疲れ、睡眠(寝すぎ・寝不足)、月経周期、天候の変化、温度差、におい、音、光、旅行、空腹、脱水、アルコールなどがあります4)
特に「ストレス」は頻度の高い要因のひとつです。約60%の患者さんはストレスがあるときに、約25%の方はストレスから解放されたときに、頭痛が起こると感じています5)

頭痛が始まるきっかけ
精神面
ストレス、ストレスからの解放、疲れ
身体面
寝すぎ、寝不足、月経周期
環 境
天候の変化、温度差、におい、音、光、旅行
食 事
空腹、脱水、アルコール

片頭痛と年齢の関係

片頭痛の発症のタイミングや症状の現れ方は、一般的に年齢とともに以下のように変化していきます4,6)。片頭痛は小児期でも発症し、有病率は30歳代が最も高くなります。男女とも50歳前後から加齢とともに改善する方が多く、女性では閉経後に改善する方が多いといわれています。一方で少数ですが悪化する方もいます。

片頭痛の時間経過

片頭痛は痛みだけではなく、さまざまな症状を伴うことがあります。現れる症状と時間の経過によって、予兆期、前兆期、頭痛期、回復期などに分類されます6,7)

予兆期
頭痛の数時間から48時間程度前に、食欲が出たり、あくびが出たり、首や肩がこるといった「予兆」を自覚する方がいます6)。予兆が起きる割合は、7%から88%と研究報告によってさまざまです8)

前兆期
予兆のあと、頭痛が始まる直前または同時期に、視覚症状(目のチカチカ、視覚消失など)、感覚症状(身体・顔あるいは舌のチクチク感や感覚麻痺など)、言語症状(失語など)といった「前兆」が起きる方がいます。前兆のある方は約25%から30%で9)、全ての患者さんに起こるわけではありません。前兆は通常5分から20分にわたり症状が進行し、持続時間は60分未満です6)

前兆の中で最も一般的な症状は「視覚症状」で、前兆のある片頭痛患者さんの90%以上に認められます6)。視覚症状では閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる、キラキラした光・点・線が見えたり、視野の一部が見えにくくなったりする症状が現れることが多いです。

閃輝暗点(せんきあんてん)

目の前にギザギザで周囲がキラキラした光が現れ、これが徐々に広がります。20〜30分で光は消失し、その後頭痛が始まります。

頭痛期
主にこめかみから頭の側面にかけて、ズキンズキンと脈打つような中等症から重症の痛みが4時間から72時間続きます。頭の両側が痛む場合やズキンズキンとしない場合もあります。動くとつらく、吐き気や嘔吐を伴うことや、光・音などに過敏になることもあります。

回復期
頭痛後に食欲低下、疲労感、気分変化(気分的高揚、抑うつ)などを認めることがあります7)。持続時間は患者さんによってさまざまですが、平均23時間程度とされています10)

出典

  • 1)Sakai, F. et al.:Cephalalgia. 1997;17(1):15-22.
  • 2)GBD 2016 Disease and Injury Incidence and Prevalence Collaborators.:Lancet. 2017;390(10100):1211-1259.
  • 3)GBD 2016 Headache Collaborators.:Lancet Neurol. 2018;17(11):954-976.
  • 4)監修/日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会. 編集/「頭痛の診療ガイドライン」作成委員会. 頭痛の診療ガイドライン2021. 医学書院;2021.
  • 5)Robbins, L.:Headache. 1994;34(4):214-216.
  • 6)訳/日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会, 国際頭痛学会・頭痛分類委員会. 国際頭痛分類 第3版. 医学書院;2018.
  • 7)Blau, JN.:Lancet. 1992;339(8803):1202-1207.
  • 8)Davidoff, RA. Migraine: Manifestations, Pathogenesis, and Management (Contemporary Neurology Series). Oxford Univ Pr;1994.
  • 9)American Migraine Foundation (AMF) : https://americanmigrainefoundation.org/resource-library/understanding-migraine-aura/ (2021年3月現在)
  • 10)Bahra, A.:Rev Pain. 2011;5(4):2-11.